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梅田防災スクラムゼミ 開催レポート
―各ビル・オフィスレベルでの帰宅困難者対応―

2023年5月

梅田地区エリアマネジメント実践連絡会では、「いざという時その場にいる人同士で助け合える、みんながみんなを守るまち梅田」を目指し、梅田エリアの就業者を対象に、防災を考えるきっかけや、防災を学びあう機会をつくる目的で、「梅田防災スクラムゼミ」を開講しています。今回は、梅田地区において災害が発生した際の各ビル・オフィスレベルでの帰宅困難者対応をテーマに、「大阪梅田における地震災害の特性・リスクについて」「災害時における鉄道会社の対応について」という2種類の講座と、自施設・自社内で想定される防災に関する取組みを話し合うワークショップを実施しました。 商業施設やオフィスビルの管理ご担当ほか、企業の総務ご担当者、インフォメーションセンターご担当者など幅広いご所属の方にご参加いただき、参加者同士で意見・情報交換を行いました。

日 時:2023年2月22日(水)14:00-16:00
会 場:ハービスPLAZA6階、4,5,6号室(オンライン会場:Zoomウェビナー)
参加者数:79名(オフライン:28名、オンライン:51名)

1.講座

テーマ:「大阪梅田における地震災害の特性・リスクについて」 講 師:斎藤 道雄氏(株式会社地域・交通計画研究所 所長 代表取締役)

斎藤氏からは「地震発生のメカニズム」「日本の各都市の想定地震と対策」「大阪梅田で想定される地震被害」「南海トラフ巨大地震発生時の大阪梅田の状況想定例」といった、地震災害に関する概論から大阪梅田での被害想定までを講義いただきました。
大阪梅田で被害リスクが高い地震は、大阪府に関係のある内陸活断層型である「上町断層帯地震」と南海トラフ型である「東南海・南海地震」の2つが代表的です。それぞれ発生確率や想定震度が異なることに加え、海溝型地震である後者は津波による被害を引き起こし大阪市内だけでも約12万人の死者を出す見込みであることなど、地震のタイプの違いによってもたらされる被害には特徴がでるという事実に、参加者からも「ためになった」というお声をいただきました。
また、梅田周辺に最も人が集まっている時間は平日が14時に約16万人、休日が15時に約14万人であり、そのようなピークタイムに大規模地震が発災した場合に想定される帰宅困難者数は、平日で6万人(帰宅困難率40%)、休日は2万人(同16%)という驚くべきデータもありました。なお、津波により大阪梅田地区が浸水した場合には、避難したビルから外へ出られなくなる人が増えるため、帰宅困難者数がもっと多くなる恐れがあるということでした。
最後に斎藤氏は、南海トラフ巨大地震を例にとり、「地震被害というと揺れに伴う建物や交通インフラ被害に注目しがちだが、津波被害発生のリスクにもっと気配りすべきだ」と述べたうえで、①津波浸水が想定されているなら民間事業者はエリアとして津波避難体制を用意することや、②自治体が進めている堤防・水門の耐震強化等の事業による津波浸水被害の抑制効果を把握しておくことも、これからの対策検討上で有効だという見解をお示しいただきました。

講座「大阪梅田における地震災害の特性・リスクについて」の様子

テーマ:「災害時における鉄道会社の対応について」
講 師:畑田 芳隆氏(阪急電鉄株式会社 都市交通事業本部 都市交通計画部 課長)

畑田氏からは「阪急電鉄の災害対策」「利用者への情報発信」「南海トラフ地震・津波に対するBCP対策」といった喫緊の交通インフラ企業の防災に関する取り組みをご紹介いただきました。
特に印象的だったのは「安全かつ迅速な避難誘導に向けた取り組み」でした。大阪北部地震後、ハード面の対策として路線上の地震計の台数を3台から7台に、気象台地震計を3箇所から6箇所に増設してきた一方で、ソフト面の対策としては「これまで震度5弱及び震度5強以上の場合は、専門の技術係員の点検完了後に運転再開をし、最寄り駅まで列車を移動していた」ところを、「震度5弱では乗務員が確認した上で列車を駅に収容」し、「震度5強以上では列車ごとに乗客の降車避難誘導の開始を判断」できる運用へと更新したというものでした。
「利用者への情報発信」としては、HPや駅改札付近のディスプレイやデジタルサイネージといった従来の媒体に加え、公式Twitterや阪急沿線アプリを活用して、計画運休を実施する場合のタイムラインに従い、台風到来2日前から運転休止の見込みを発信することや、運転休止中に運転再開の見込み時間などを出来る限り具体的に発信するよう取り組んでいるとのことでした。

講座「災害時における鉄道会社の対応について」の様子

2.ワークショップ

ファシリテーション:永田 宏和氏(NPO法人プラス・アーツ 理事長)

前半の斎藤氏と畑田氏の講義を受け、後半は参加者同士でグループを作り、自施設・自社内で現在計画・実施している災害対策の共有や、これから実施すべきだと感じた対策について意見交換を行うワークショップを実施しました。似た所属(職種)の参加者同士で組成されたグループに分かれ、梅田地区エリアマネジメント実践連絡会メンバーの進行で集約された意見を最終的に発表しあう、という時間でした。
グループワークを通じて、「一斉帰宅抑制の社内での周知が進んでいないこと」や、「浸水対策・帰宅困難者対策が事業所のあるエリアごとに異なること」、「外国人に発信する情報を収集することが困難であること」といった現時点で抱えている各々の課題や事情などを参加者同士が共有しあうことで、そういった複雑で困難な課題に対してどのように取り組んでいくべきか、という前向きな議論が各グループで行われました。参加者アンケートには「他業種の取り組みが参考になった」「ワークショップで異分野の方と話す機会を得られた」といった自施設・自社以外の防災啓発活動をインプットできたことに対して肯定的なご意見を多くいただきました。

ワークショップの様子

ゼミ終了後に実施したアンケートでは、他にも「まだまだ課題が山積みと感じ、会社としてもモチベーション高く取り組まないといけないと思いました」「防災関係の貴重な情報を提供いただきありがとうございました。今後の業務に活用させていただきます」といったお声をいただきました。

今後も本ゼミでは、梅田地区で働く方々への情報提供はもちろん、それぞれの施設・企業の防災に係る悩みや課題を共有し、ともに解決に向かって連携できる場づくりを進め、「みんながみんなを守るまち 梅田」の実現を目指します。

梅田地区エリアマネジメント
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