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Walkabe UMEDA構想レポート
「歩道上の滞留・交流空間づくりのための社会実験」

2021.1.15

梅田地区エリアマネジメント実践連絡会(以下「実践連絡会」)は、梅田の公共空間には、新たな出会いや発見が満ち、多様なイノベーションを生み出す潜在的な力があると考え、その力を活かすための行動指針「Walkable UMEDA構想(以下「WU構想」)」を策定しています。
今回はこのWU構想のもと、2020年11月3日(火)~8日(日)の6日間、国土交通省補助事業(官民連携まちなか再生推進事業)により実施された、歩道上の滞留・交流空間づくりのための社会実験についてレポートします。

1.社会実験の背景~Walkable UMEDA構想~

実践連絡会では、2009年の設立より、梅田地区全体が「歩いて楽しいまち」となることを目指し、“歩きにくさ、分かりにくさ”の解消に向け、これまでに多言語対応のマップ作成や、誘導サインのデザイン統一などを実施してきました。
一方で、都心部に流入する自動車交通量の減少をはじめとした社会の変化により、都市の公共空間は“施設間を移動する場”だけではなく、“出会いや交流、協働が生まれる場”として活用されることが期待される時代になってきました。

2017年~2019年に国土交通省(以下「国交省」)「国際的ビジネス環境等改善・シティセールス支援事業」の補助を受けて策定したWU構想は、公共空間にかかわる国・地方公共団体、民間事業者、地域住民の方々など、地区内の様々な関係者が主体的に参画することにより、安全で快適かつ多様なイノベーションが生まれる空間(イノベーション景観)の創出を目指しています。

「歩いて楽しいまち」の実現に向けた4ステップ

  • WU構想づくりと
    その発信

    梅田地区にある公共空間の活用可能性や官民連携で目指すビジョンを共有する

  • 地区内エリアで
    社会実験

    公共空間での社会実験を通じ、各エリアの特性に応じた活用可能性を検証する

  • 公共空間活用の
    仕組み整備

    エリアごとの特徴や魅力を引出し、公共空間に出現させるための仕組みを整備する

  • イノベーション
    景観の創造

    各エリアの特徴を生かし、様々な主体によって、公共空間が創造的・先進的な取組みに使われる

2.構想実現に向けた社会実験の実施

このWU構想の実現に向け、梅田地区の結節点となる公共空間を選定し、官民連携で社会実験に取り組んでいます。今回は梅田地区内の「市道工業学校表通線」の下図赤枠箇所において、社会実験を実施しました。

社会実験実施箇所「市道工業学校表通線」普段の様子(東側より)

今回の社会実験は、普段は歩行空間として利用されている公共空間(歩道)上にテーブルやイスなどを設置し、新たに滞留空間をつくることで、「交流」「コミュニケーション」といった行動を生み出せるか、また行動に繋げるにはどのような機能が必要かを検証するもので、主に次の視点から実施しました。

歩行空間(歩道スペース)を確保しつつ、安全に滞留空間を確保できるのか?

歩行者・自転車別の交通量調査で検証

どのような滞留空間が機能的、空間的によいのか?

滞留スペース利用者へのアンケート調査およびアクティビティ調査
(利用者の数・時間・行動の記録・来場方向等)で検証

社会実験実施に至るまでの協議・調整

梅田地区の屋外空間には、様々な権利・管理主体が関係しています。今回の社会実験では、様々な関係者との協議・調整を行いました。
また、歩道(道路)上へのテーブルやイス、パーゴラ(日陰棚)の設置にあたっては、大阪市の「都市再生推進法人準備団体認定制度」を活用し、実践連絡会構成者の一部で組織する一般社団法人大阪梅田エリアマネジメントが主体となることで、大阪市都市計画局による道路占用や道路使用許可取得についての支援を受け、実施しました。

  • WU構想検討会の実施

    横浜国立大学名誉教授・小林重敬先生を座長に、行政関係者や学識経験者との間で今回の社会実験の意義・方向性について議論し、周辺地域との調整など社会実験実施に必要な事項について検討を行いました。

  • 道路管理者(大阪市建設局・工営所)、交通管理者(曽根崎警察署)との協議

    社会実験に必要なテーブル・イスなどの設置・運営方法と、歩行者動線の確保について大阪市都市計画局の支援のもと協議を執り進めました。なお、道路占用許可、道路使用許可は前述の「都市再生推進法人準備団体認定制度」により大阪市都市計画局に取得していただきました。

  • 地域町会・沿道店舗との調整

    地域町会・沿道店舗に社会実験概要を説明のうえ、実施への協力を得ました。

社会実験の様子

前日の11月2日、滞留空間の設営を開始しました。歩行空間を十分に確保したうえで、歩道の一部を占用し、この社会実験のために設計したテーブル・イス・パーゴラを設置しました。

滞留空間では、周辺の店舗を利用する家族連れの方々などにご利用いただき、他の滞留者との会話や飲食、スマートフォンの操作などのアクティビティが見られました。

また、初日の11月3日には、周辺地域にある上田安子服飾専門学校の学生たちによるファッションショーも開催されており、実験エリアを通過されることで滞留空間の賑わいにもつながったほか、地域内で行われたファッションショー審査会場への人の流入も確認できました。

3.今後の展望

現状、この社会実験のような場を作り出していくには、道路など公共空間の管理主体との連携・協働による事業体制の構築や、継続的な活用に向けたルールづくりなど、様々な課題があります。
実践連絡会では、今回の社会実験のような試みを今後も実施してゆくことにより、公共空間において、単なる移動以外にも、人との出会いや交流、協働といった新たな体験や価値を生み出す可能性を探りつつ、公共空間活用の実績やノウハウを積み上げながら、上記の課題を解決していきたいと考えています。
そうした課題の解決により、梅田地区内の各エリア・関係者との連携や共創を促す仕組み・実施体制を整えて、梅田地区内の歩行者空間ネットワークを強化させることで、イノベーションを呼び込む空間を創造し、梅田の都市ブランド向上を目指していきます。

梅田地区エリアマネジメント
実践連絡会メンバー

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